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「あれ?春や5月を通り越して、もう梅雨ですかと聞きたくなる位、雨の日が続いているのだ。水もしたたるいい男こと、うら順なのだ
先日、おいらは大変お世話になった大先輩のお葬式に出る為、お江戸に向かったのだ。おいらは、東京は谷根千で知られる谷中の地で6年ほどを過ごしたのだ。ここには大学に通いながら、お坊さんの基礎を学ばせて頂く為の専門の学生寮があり、おいらは学生として2年、その後お手伝い的立場として4年お世話になったのだ。その時に可愛がって頂いた大先輩が急逝され、おいらはお別れに行ってきたのだ。お世話になった寮にもなかなかご挨拶にも行けなかったけど、今回は時間に余裕があったので久しぶりでお礼をかねてお参りをしてきたのだJRだと山手線の日暮里駅が最寄なのだ。駅を出ると、周囲は当時と大分町並みが変わり大きなビルが建っていたのだ。でも、通学路だった谷中霊園に一歩足を踏み入れると、そこはほぼ当時のまま。おいらは、当時の色んな事を思い出しながらゆっくりと寮へ向かったのだ。よく通った酒屋さんが、なぜか高級自転車屋さんになっていたり、行きつけの居酒屋さんがまだ残っていたり、路地裏をぐるぐると巡りながらおいらは郷愁に浸ったのだ寮に着くとご挨拶をし、まずは本堂にお参りに向かったのだ。お借りしているお寺の本堂では、おいら達もそうだったように今も学生さん達がお経や色んな作法、法具の練習をしていたのだ。本堂で手を合わせていると、ほとけさまから「うら順よ、初心忘るべからず」と声が聞こえてきたのだ・・・多分。あの頃の熱い想いを忘れないように、おいらは寮の中を一巡り周って見てきたのだ。色んな事が想い出され、おいらのやる気スイッチが徐々にリセットされていくようだったのだ。帰りがけにはお戻りになられた大恩師の先生やご家族にもお会いでき、すっかりおいらのやる気バッテリーはフル充電された感じが。大恩師の先生から「どう、ちょっとお経の練習して行けばと冗談混じりに言われたけれど、おいらは笑ってごまかしつつその場を失礼したのだ。
その後も、青春、青年時代を過ごした街をふらふらと巡り、おいらは上野まで歩いたのだ。お葬式まではまだ時間もあり、アメ横や御徒町周辺もお散歩してみたのだ。ふと御徒町の駅でおいらはある事を思い付いたのだ。それは、人生初のスイカを買う事。食べるスイカではなく、あの電車に乗る時に使うカードの事。寮への訪問で、初心忘るべからずという想いに新たに火が灯ったおいらは、早速新しいチャレンジに挑む事にしたのだ悲しい位たいしたチャレンジではないけれど、42歳の田舎のおじさんには大チャレンジなのだ。今まではあの改札でカードでピッってやつに、ちょっぴりあこがれていたけれど、たまにしかお江戸にも来ないし使う機会も無いので、いちいちキップを買っていたのだ。その昔、愛妻と電車に乗った時はおいらがキップを買っている間に、愛妻はピッとカードをかざして先に行ってしまい、ちょこっとうらやましかったのだ。でも、いざ買うとなるとすでにどこでどう買えばいいかさえ分からないという始末。とりあえず、自動券売機を見てみるとどうやらカードが買えそう。おいらがもたもたしていたら、迷惑そうに後ろからおばあちゃんがやってきて、スイカを取り出すとお金を入れてチャージとかいうのを慣れた様子で済ませていったのだ「ばあちゃん、かっこいいじゃないか」とおいらは羨望のまなざしを送りながら、いよいよ購入してみる事に。いざ、パネルをタッチすると記名とか無記名とか3つ位出てきたのだ。すでにつまづくおいら。「げっ、それなんすかと動揺しながらも周囲に悟られないよう、おつむをフル回転させおいらは4秒で恐らく無記名が面倒ではないだろうと答えを出し、画面をタッチ。そして2千円分のカードを買う事に見事成功したのだ。すぐにでもピピッと改札を通りたかったけど、その日はもうJRに乗る予定はなし。葬儀の会場も歩いていける場所だったのだ。お楽しみは先にとっておくほうがうれしいのだ。その後葬儀に参列を終え、おいらはアメ横の居酒屋で今一度大先輩に献杯し、おいらの初スイカ購入の祝杯をささやかにあげたのだ。愛妻よ、愛娘モンちゃんよ、ジュニアくんよ。父ちゃんはついにやったぞ。やったよ~と心の中で叫びながら、ビールのお代わりをしたのだ。
一夜明け、おいらは帰り支度を始めたのだ。「いよいよスイカ使っちゃうもんね~とわくわくしていたおいら。しか~し何気なくテレビをつけるとそこには信じられない文字が。「山手線ただいま運転見合わせ中」。どうやら事故か何かがあった様子。ホテルの窓からも線路が見えているけど、そういえば全然電車が走っていないのだ。しばらくすると騒々しくヘリが飛ぶ音が絶え間なく続くように。「こりゃ、何か大きな事故か事件だな」と思いつつ、おいらはとりあえず御徒町駅にむかったのだ。するとやはり、線路に鉄柱が倒れたらしく運転再開は夕方になるとの事おいらは、仕方なくスイカデビューを諦め地下鉄を乗り継ぎ、新宿まで向かったのだ。おいらのスイカデビューを阻む何か見えない強大な力か魔が働いていたのか、こうしておいらのスイカデビューはお預けとなったのだ。夜、我が家に戻ったおいらは事の顛末を愛妻に話したのだ。初めてスイカを買った事。そしたら電車が動かなかったので、結局スイカを使えなかった事。地下鉄を乗り継いで歩いたら、足が痛くなってしまった事愛妻はふんふんとおいらのグチを聞いてくれたのだ。そして最後に明るく一言。「スイカって地下鉄でも使えるよ・・・」。
おいらはこの後、やけ酒ビール半ダースをあおり、しばし自己嫌悪に陥ってしまったのだ

おいらの初スイカ 愛すべき谷中の一風景 おまけ・最近のジュニアくん
「東京なんて大っ嫌いだ~と夕日に叫んだおいら。今度はパスモを買ってやる~。んっ?ぱすもって何だ
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